特別対談

【特別対談】弁護士対決?!現場から見える終活の「法律」と「感情」

編集部:
『終活整理手帖』の特別企画として、終活にまつわるプロフェッショナルの先生方による対談をお届けしております。
今回は、中島先生と佐藤先生という、弁護士の2名をお招きし、同業だからこその話が伺えればと思います。
よろしくお願いいたします!

画面左より(敬称略)

佐藤
佐藤

佐藤 啓介 (さとう けいすけ)
弁護士/なぎさ法律事務所

中島
中島

中島 央貴 (なかじま ひろき)
弁護士/梅田セントラル法律事務所

佐藤・中島:
よろしくお願いいたします!


Give Me a Truth!弁護士軍団の見解は?!

編集部:
今回はせっかく弁護士同士の対談ということでまずお聞きしたいのは、例えば某TV番組のように、とあるケースにおいて弁護士により意見が割れて対立するというような事例ってあったりするんでしょうか?

佐藤:
もちろん意見が割れることもありますが、実は皆さんが思っているほど多くないと思います。
裁判例や実務の蓄積がありますので、同じ資料や記録を見れば、多くの弁護士はこんなところが争点になり、どのような方向性になるだろうなという結論は似てきますが、異なるのは、その事実のどこに着目するかという捉え方の部分だと思います。

中島:
例えば、“イゴン無効”のケースとかですと…。

編集部:
“イゴン”…?
なんですか、それ?

中島:
あ、すみません。
一般的・社会的には、“遺言(ユイゴン)”と言われるものですね。(笑)
法律や公的な書類では“イゴン”が正式とされる読み方で、佐藤先生と話す上で専門用語の方で呼んでしまいました。
分かりやすさを考慮して相談者さんの前とかだと“ユイゴン”って呼ぶようにしています。

編集部:
あ、そうなんですね!
専門用語と一般的な呼び方で違いがあるの、面白いですね!

中島:
その遺言が有効か無効で争うケースとかですと、病院のカルテや介護記録、当時の生活状況などを集めて、「その時点で遺言を書く判断能力があったのか」を検討します。

佐藤:
例えば、遺言を作成された方が認知症だったとして、その診断書だけで遺言が無効になるケースは少ないと思います。
日常会話が成立していたのか、自分の財産や相続人を理解し自分の意思をきちんと伝えられていたか。
診断書だけではなく、カルテや介護記録などの様々な事情を総合的に判断します。

中島:
その上で、遺言を有効と主張する側なのか、無効と主張する側なのかによって主張するポイントが弁護士ごとに異なる、ということになります。
有効だと主張する側は、逆に、普段どおり会話ができていた記録や、自分の意思を示していた場面を根拠として挙げます。

編集部:
同じ資料でも、どこに着目するかは立場によって変わるということですね。
先ほどの話だと、それでも結論はある程度一致するんですか。

中島:
はい。
遺言書を無効にするためのハードルは比較的高いので、「この程度では難しい」という感覚は、多くの弁護士で共通しています。
ですので、バラエティ番組のように弁護士によって意見が割れる、というケースは多いわけではないと思います。


勝ち目の薄い相談にどう取り組む?弁護士のリアルな本音

編集部:
その場合、感覚として「この事案は、依頼者の要望を叶えるの難しいだろうな」というような、いわゆる“勝ち目が薄い”時もありそうですよね。
そんな時はどうするんですか?

中島:
もちろん実際には、感覚ではなく証拠や判例をもとに判断しますので、一番は裏付けを確認します。
どれだけ納得できる事情があっても、それを裏付ける資料がなければ裁判では主張しづらくなります。

佐藤:
まずは医療記録や看護記録、遺言書の文面や内容など、客観的な資料を集めて検討します。
それでも、なかなか請求が認められるのは難しいだろうなということもありますが、きちんと、その「難しい理由」と「考えられるリスク」を十分に説明した上で、最終的には依頼者ご本人に判断していただきます。 

中島:
それに、裁判は勝敗だけではありません。
和解という選択肢もありますし、依頼者が何を望んでいるのかも非常に大切です。

編集部:
なるほど。
依頼する側としては、もちろん結果も大事ではありつつ、「きちんと言い分を主張した」という過程が納得感に繋がる可能性もありそうですもんね。

中島:
まさに、相続のような家族間での事件には、その難しさがあります。
「親の介護を自分だけがしてきた」「昔から兄弟間で不公平だった」など、何十年分もの感情論が積み重なっています。 

佐藤:
法律面の話だけを説明しても、依頼者が納得できるとは限りません。
その気持ちを受け止めた上で、できること・できないことを丁寧に説明する必要があります。

中島:
弁護士によっても得意・不得意があると思っていて、相続案件を多く扱うには、そういった感情に寄り添う姿勢を持てる人が比較的向いているんじゃないかなとは思います。


弁護士がよく見る終活のトラブルあるある

編集部:
ここまで、遺言の話を聞いてきましたが、弁護士が関与する終活関連の相談には、他にどのような相談がありますか?

中島:
被相続人のお金の使い込みの件なんかは弁護士が関与しますね。
仮に、親の預金が何千万円かあったのに、それがいつの間にか使い込まれていて残預金が少なくなってしまっていたとしましょう。
相続は原則として死亡時点の残預金を元に算出されますので、そうすると、その人以外の相続人からすると本来相続するはずの額から減ってしまいますよね。

編集部:
そんなことってあるんですか?

中島:
例えば、相続人、相続人ではない親族、内縁の配偶者が使い込んでいるなど、様々なケースがあります。

編集部:
それって生前贈与とかに当たらないんですか?

中島:
まさに、そのあたりが争点になります。
例えば、家の修繕をする際にそのお金の管理を委任しているだけとか、あとは介護をしてもらっていて、その対価として小遣いを与えてるだけとかだと、使い込みに当たらないケースもあります。
ですので、その修繕や介護の内容であったり金額が妥当か否かを精査していくことになります。

佐藤:
まぁやはり、相続周りは多いですよね。


こんな人は遺言書を書いてくれ!

佐藤:
終活の話でいうと、こういう場合は遺言書の作成を検討した方がよい、という場合があります。
その1つが、本人が独身で配偶者や子供がいないケースです。

中島:
あー、そのケース、大変ですね~。

編集部:
どういうことですか?

佐藤:
先ほど挙げた例はいわゆる「おひとり様」の例で、「おひとり様」といっても①独身だが兄妹姉妹やその子がいて、疎遠だけれども相続人がいるケース、②親族の中に法定相続人にあたる人がいないケース、があります。
例えば①のケースだと、両親も天寿を全うされていて、兄弟とも疎遠だったりすると相続人の方からみて、他の相続人がいるのかどうかわからないということや、他の相続人がいても、連絡が取れないというので、相続人に連絡が付かないという事態になったりします。

中島:
相続権って、法律で保護されているんですね。
だから、「連絡付かないのでこの人抜きで話を進めます」というのはなかなかしづらいんです。

佐藤:
そうなると、相続人を調査したりするのに、費用も時間もかかります。
所在が分かっていてもこちらからの連絡に回答がない場合は家庭裁判所に申し立てて、「不在者財産管理人」というものを選任してもらう必要があるケースも出てきます。

中島:
②のケースだと、ご自身が天寿を全うしたあとに様々な手続や費用の支払をできる人がいないということになりますので、ご自身がどのように葬儀を行ってほしいかや、どのように埋葬や納骨をされたいかなど、死後事務委任契約と合わせた遺言書の作成の検討をした方がよいと思います。
ですので、「おひとり様」の方は遺言書のの作成を一度は検討なさることをお勧めします。

編集部:
他に、遺言を残しておくべきケースではどのようなものがありますか?

佐藤:
会社経営されていて事業承継が絡むケースですね。
自社の株式も相続の対象になるのですが、遺産分割協議では後継者が単独で株式を承継できるとは限らず経営権が分散してしまうリスクがあります。
その場合、家族だけでなく、従業員、取引先など多くのステークホルダーが影響を受けてしまうので、後継者を明確に決めるために株式を誰が承継するかを指定する遺言を用意しておいてほしいです。

編集部:
逆に、遺言を用意しない方がいいケースもあったりするんですか?

中島:
無い方がいいケースはあまりないと思いますが、無くてもいいケースならありますね。
相続人同士の関係が良く、法定相続分で問題なく分けられるケースであれば、遺言書がなくても円満に解決できることがあります。

編集部:
つまり、「遺言書を書くべきかどうか」は、ご家庭や財産の状況によって大きく変わるということですね。

佐藤:
その通りです。
だからこそ、ご自身だけで判断するのではなく、一度専門家に相談していただきたいですね。 


まずはプロにじっくり相談してみよう

編集部:
専門家への相談という話が出ましたが、どうやって相談したらいいですか?

中島:
一番分かりやすいのは、相続相談会のような会に参加してみるのが良いと思います。
我々も相談会のメンバーとして参加させていただいてますが、『終活整理手帖』さんの方でも開催されている相談会だとじっくりお話を伺えるのがいいですよね。

佐藤:
本日も話しましたが、相続は背景事情と客観的な証拠がすごく重要になってくるので、短時間では判断できないことも多くて。

中島:
家族構成や財産の状況、これまでの経緯まで丁寧にお聞きすることで、その方に合ったアドバイスができます。 

佐藤:
それに、我々は法律の専門家ですが、相続は法律の知識だけで解決しないこともあります。
税金や登記など、さまざまな専門知識が必要になりますので、税理士や司法書士など他の専門家と連携できる点も相談会の大きな強みです。

編集部:
なるほど。
法律のプロという観点から相続などの詳しいお話をお伺いできまして、本日はまことにありがとうございました!


編集後記

今回は、弁護士同士の対談ということで、お2人ともかなり踏み込んだお話をしてくださいました。

そして、弁護士同士だからこその共感なども対談の端々から垣間見ることができましたし、相続は感情も込みで考えないといけないというお2人の懐の広さも伺えて、非常に面白い対談になりました。

今回かなり具体的な話も聞くことができましたので、この対談を見て心当たりが浮かんだ方は、是非とも本サイトのいろんな記事をご覧いただいたり、相談会に足を運んでいただけますと幸いです。

この対談に登場した先生

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